ヒューイ日誌

考えたことを発信するのが目的ですが、具体的な形は見えていないので、書きながら作って行きます。

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 〜書評

 子供の頃から、なぜ僕らは同じ本や文章を読んでも「理解」に大きな差が生まれるのか?と疑問に思っていた。
 
 それを我々は「読解力の差」と簡単に片付けてしまうわけだが、「読解力」の有る無しは具体的に何が違うのかを理解できないと、読解力向上のために、どのような努力をすればよいのかはわからない。
 
 本書では、文章を読む際に「分かる」状態から「より分かる」状態に至る過程の主たる障害が「分かったつもり」にあると指摘し、この状態が先の探索活動を妨害するものであるとする。また「分かったつもり」になることで、部分を読み飛ばして誤った認識を得たり、変化の面白さ・玄妙さを味わえなくなるといった弊害が生じると説く。
 
 「わからない」状態は気持ちが悪く安定していないため、人はいち早く「わかった」という安定した状態になろうとする。そして浅い読みや誤読により「分かった」と認識し、実際は「分かったつもり」の状態に置かれてしまう。この状態から抜け出すのは、「矛盾や疑問」といった理解へのモチベーションが無くなっているため、簡単ではない。
 
 我々が深い分析、深い読みを行うためには、自分がこの「分かったつもり」の状態にあることを認識し、何度も自分に問い直しながら、自分で打開していく強い意志が必要である。それはソクラテスが説いた「無知の知」の姿勢とも同じであろう。