わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 〜書評
子供の頃から、なぜ僕らは同じ本や文章を読んでも「理解」に大きな差が生まれるのか?と疑問に思っていた。
それを我々は「読解力の差」と簡単に片付けてしまうわけだが、「読解力」の有る無しは具体的に何が違うのかを理解できないと、読解力向上のために、どのような努力をすればよいのかはわからない。
本書では、文章を読む際に「分かる」状態から「より分かる」状態に至る過程の主たる障害が「分かったつもり」にあると指摘し、この状態が先の探索活動を妨害するものであるとする。また「分かったつもり」になることで、部分を読み飛ばして誤った認識を得たり、変化の面白さ・玄妙さを味わえなくなるといった弊害が生じると説く。
「わからない」状態は気持ちが悪く安定していないため、人はいち早く「わかった」という安定した状態になろうとする。そして浅い読みや誤読により「分かった」と認識し、実際は「分かったつもり」の状態に置かれてしまう。この状態から抜け出すのは、「矛盾や疑問」といった理解へのモチベーションが無くなっているため、簡単ではない。